

ABC(Activity-Based Costing、活動基準原価計算)は、1980年代のアメリカで製造業の間接費を製品に配賦する方法として考案されました。 企業における原価計算は財務会計の一環として行われています。これは定められた会計基準に基づいて利益を確定し、納税額を算定するための会計であり、制度会計とも呼ばれます。
これに対してABCは、制度会計とは別に企業内で独自に行われる、管理会計の一つです。財務会計のデータを基礎としつつ、制度会計とは異なるロジックに従って原価計算を行います。
「なぜコストが増加しているのか」「どのプロセスが原価を押し上げたのか」「どの顧客が利益を産んでいるのか」・・・
ABCによる管理会計ソリューションは、これらの問いに数字(金額)で回答を出し、経営のナビゲーションツールとして活用されています。
ABCの特徴は、発生した経費を部門に割り振るのではなく、組織内で行われる「活動」単位にコストを集計し、これを原価計算対象別に積み上げて原価を算出する仕組みにあります。 実際の計算においては、「製品(商品)が活動を消費し、活動が経費を消費する」という基本理念で原価を算出します。金融機関におけるサービス原価管理を例に考えると、例えば「融資」という「商品」を作るために、渉外活動や審査事務といった「活動」が消費され、こうした各活動は人件費や物件費といった「経費」を消費して行われている、と考えます。
原価計算対象は目的に応じて様々な設定が可能です。上図の例では、営業店別の収益管理を実施するために、各営業店を原価計算対象としています。この他にも、取引先別、商品別といったセグメント別にコスト計算(及び収益管理)を実施することも可能です。
資源コストを活動コストへ、活動コストを原価計算対象へ配賦する際の計算基準としては、様々な定量的データが用いられます。例えば人件費については日報や月報、アンケートなどから得られる活動時間、地代家賃であれば占有面積などの数値を用います。活動から原価計算対象への配賦では、取引件数や回数などのデータを用いるのが一般的です。こうした、配賦割合を決定するデータを「ドライバ」と呼びます。
企業内の情報化(ITシステム化)が普及したことで、様々な数字をリソースドライバ、コストドライバとして取得しやすくなったこともABCの発展を支えています。
制度会計に基づく伝統的な原価計算と比べ、ABCには次の4つの特徴があります。
| 間接費比率の高いビジネスに適合性が高い |
| 製造業に比べて間接費が高いと言われるサービス業においても、より精度の高い原価計算を行う事ができます。 |
| 原価の分析が容易であり、業務改善に活用できる |
| 活動単位でのコストの把握は業務プロセスのコスト管理にもつながります。間接部門や外部サービスとの連携を含む、ビジネスプロセス全体を会計情報で表現することが可能になります。このため、業務プロセス改善(BPR)や製品・サービスへのプライシング(価格決定)等に応用することが容易です。原価計算対象の設定自由度も高いため、活用目的に合わせた原価の算出が行える事もポイントです。 |
| 納得性が高い(得やすい) |
| 例えば「営業店の業績評価を店別収益に基づいて行う」という場合に、他部門から強制的に割り当てられる費用に対して各部門長は敏感です。営業店内と同じ計算ロジック(活動基準原価)に基づいて本部費用が算出され、その割当根拠(コストドライバ)が明示されているのであれば、営業支店長等の納得も得やすくなります。 |
| 採算管理、経営管理といったレイヤーごとに数値が提供できる |
| コストが可視的であるということは、責任の所在も明確です。また、コストの発生要因が把握できるので、部門長や経営者にとっても意思決定の参考になりうるコスト情報を提供できます。 |
こうした特長が受け入れられ、ABCは製造業のみに留まらず、サービス業や公共セクター等でも広く採用されるようになりました。 原価計算(Activity-Based COSTING)から、経営管理(Activity-Based MANAGEMENT、活動基準管理)へと活用シーンを広げつつ、ABCは企業活動の現場で発展を続けています。